【永久保存版】猫 腎臓病まるわかり 

猫ちゃんに多い腎臓病

腎臓病と一般的に言われるのは慢性腎臓病のこと 獣医師はカッコつけてCKDと言ったりします。

慢性腎臓病は何らかの原因で腎臓の機能が3ヶ月以上低下している病態

ということは一回の血液検査では3ヶ月以上続いているかなんてわからない。慢性腎臓病ですねと状況を加味して予測している。

猫の50%で起こりうるとか 15歳以上猫の81%は腎臓病という報告も。 多すぎる

猫に腎臓病が多い理由はタンパク質AIMが関与しているとかしていないとか。東大チームが研究中 難しい話はお任せして私たちは現時点でわかっている情報を整理してみましょう。

まずどのように腎臓の機能を評価するかというと様々な検査から評価予測します。

代表的な検査は3つ

血液検査 腎臓の機能を数値で把握 BUN CRE リン カリウムなど

画像検査 エコー レントゲンなどを用いて腎臓の形態的な評価(見た目)

尿検査 おしっこは黄色くできてる?濃縮機能の評価 濾過のフィルターは壊れてないかい? タンパク尿評価

上記の項目などを検査し総合的に腎臓病の機能を予測しステージ分類を行う

腎臓のステージ分類にはIRISの分類を用いる

ステージは1〜4 数値が高いほど重度の腎臓病

↓ステージ別勝手に一言解説↓

ステージ1 要注意! 意外とここが大事? 腎臓に負担のかかる事は避けて 腎臓をいたわろうステージ

ステージ2 具合は悪くはないけど治療開始ステージ 腎臓病療法食の登場!

ステージ3 ちょっとだるい 治療あれこれステージ

ステージ4 だるい 頼むから少しでもだるさ、気持ち悪さを和らげてくれステージ

ステージ1ステージ2ステージ3ステージ4
クレアチニン(mg/dl) 犬<1.41.4-2.82.9-5.0>5.0
クレアチニン(mg/dl) 猫<1.61.6-2.82.9-5.0>5.0
推奨される治療腎毒性のある薬剤は注意して使用ステージ1治療ステージ2治療ステージ3治療
心臓や尿管尿道のチェック腎臓病療法食吐き気への対処栄養チューブ
新鮮な水を常に飲めるような環境低カリウムの治療貧血の治療の検討リンを<6.0mg/dl
クレアチニンの変化をモニター皮下注射など検討
原因や併発疾患の治療リンを<5.0mg/dl
高血圧やタンパク尿がある場合は治療
リンを<4.6mg/dlに維持
クレアチンでステージ分類した場合の大まかな治療方針

腎臓病の治療は総合的に行う必要があります。それぞれの治療や検査項目に少しだけ詳しくなってみましょう!

まずはリンってやつを考えよう

初めて腎臓病と診断された時の血液検査リン濃度が6.8mg/dl以上だと400日生存

6.8mg/dl未満だと1000日以上生存という報告も(2007年)

リンが低い方が良さそうですね

実際、慢性腎臓病の子でリン制限食だと1000日生存 通常食で800日生存というデータ(2000年)

リン制限食は腎臓病療法食の事と思ってオッケー

ステージ2はリン濃度 3.5-4.6mg/dl

ステージ3はリン濃度 3.5-5mg/dl

ステージ4はリン濃度 3.5-6md/dlを目標にする

リンというのは不必要な訳ではありません。細胞の膜の構成する成分の一つで大事です。

腎臓病じゃない子に腎臓病療法食を食べさせて低リン血症で貧血にさせてしまった経験(点滴治療で元に戻りましたが)があるのできちんとリンをモニターしながら腎臓病療法食を食べて下さい。

療法食はちゃんと適用疾患で使用しないといけないんだなと思い知りました(当たり前でお恥ずかしいです)

リンを下げるにはリン吸着剤ってのもあります

レンジアレン↓やや¥高めの印象

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次にタンパク尿へのアプローチを知ろう

腎臓はおしっこを作るところ。身体中の毒素をギュッとまとめて外に出すイメージ。尿検査も腎臓病の検査には必須、あなどれない検査 2週間に1回。計3回の平均のタンパク数値を参考にするのがオススメされている

簡単にいうと、腎臓に負担がかかるとタンパク尿が検出される。 この腎臓の負担は間質の繊維化、糸球体硬化といった腎臓が硬くなるのを加速させるかもしれない。

治療薬はACE阻害薬、ARB(アンギオテンシン受容体阻害薬)

これらはタンパク尿の軽減、腎臓の保護作用が期待できる

ACE阻害薬はズーっっと使ってるとうまく効かなくなってくるかも(アルドステロンブレイクスルー)と言われていて現在はARBがよく用いられるかな。

商品名はセミントラ 成分名はテルミサルタン

セミントラホームページ   https://www.semintra.jp/

腎臓の繊維化とは?

貧血や腎臓の障害で細胞が低酸素状態になると筋繊維芽細胞という繊維の赤ちゃんがダメージを受けた場所に生まれて腎臓の繊維化が進行していく。

人医療ではこの繊維化を抑えるであろうベラプロストという薬を使うことでクレアチニンが2倍に上昇したり、透析や腎臓移植をする事なく生きている確率が高まったと報告されている。私の猫への使用感は劇的に腎臓の数値を減らす感じではないが数値は上がりづらいかも?という印象

タンパク尿も出てない。リンも基準値内。でも腎臓病IRISステージ2って場合には最初に検討してもいいかもしれないと現時点(2021.9月)では思っている。

高血圧は要注意項目?

9歳以上の健康な猫の13% 基礎疾患のある猫の87%で高血圧を診断。動物病院での血圧測定は約17mmHg血圧は高くなる傾向にある

高血圧の面白いところはCKD(慢性腎臓病)のどのステージでも起こりうる。腎臓のステージが高いから発生しやすくなる訳ではない。ただ高血圧は高い圧でギューーーーーっと腎臓の ろかに負担をかけるので(ムリヤリ網の細かいフィルターにタンパクを押し付けるイメージ)タンパク尿の悪化やそれによる腎臓病の悪化は起こりうる。

人は高血圧は塩分を抑えましょうと言われるけど猫はどうなんだろうか、、、

健康な猫は高塩分食でも血圧は上昇しないとデータあり。ただし健康な猫なので過剰な塩分摂取は腎臓病では避けたほうが無難かなと個人的には思ってます。〇〇〇〇ー○/○って療法食とか

治療はACE阻害薬 ARB(アンギオテンシン受容体阻害薬) CCB(カルシウム拮抗薬)など

あれ?ACE阻害薬?ARB??どこかで、、、あ!?タンパク尿の治療ですね!!

一石二鳥!

でもACE阻害薬は効果がにぶってくる可能性ありましたね。覚えてますか?笑

ですのでタンパク尿もある場合ARBは良い選択肢になりそうですね

私は血圧の管理はCCBが好きですが薬が何種類も増えるのは猫にとってはキツいのでまずはARBからも大賛成です。

貧血について

腎臓は体の毒素の排出のために尿を作る以外に『血を作れよー』って号令出してるの知ってましたか?

CKDで腎臓に負担がかかっていると腎臓は自分の事で精一杯なので2番目の働きである『血作れよー』って号令を出してる場合じゃなくなるイメージと患者さんに話しています。貧血だと寿命が短いというデータもあるので貧血のコントロールもだいじです。貧血→血が少ない→血は酸素を運びます→低酸素→あ!さっきやりましたね!→繊維化です

治療はというと『血を作れよー』って号令を注射できます。使いすぎもよろしくはないのでタイミングは担当医の先生と相談を。

ポイントは必ず『鉄』と一緒に使うこと。

せっかく『血を作れよー』って号令出しても作る材料の鉄がないと、せっかく号令は出したのに材料がなくて作れない そんなの悲しすぎます。鉄剤を併用しましょう

尿毒症について

だんだん腎臓病のステージが上がってくると尿毒症と言われる気持ち悪さMAX状態になります。尿毒症のイメージは本当は腎臓がおしっことして体から排出するはずの毒素が出しきれずに体を巡って気持ち悪い感じです。

脳へたどり着くと発作なども起こします。

原因物質の一つはインドキシル硫酸という物質です。

アミノ酸の一種トリプトファンが腸でインドールになり

インドールってのが肝臓でインドキシル硫酸に変わります

対策としてはインドールが腸にいる間に吸着したり減らしちゃおうってのがネフガード、カリナールコンボ、イパキチンなどの吸着剤

プレバイオティクス、プロバイオティクスも腸内環境を整えることで効果を発揮する可能性が示唆されています(アゾディル)。

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治療中の食欲って大事

腎臓病の治療は波があったりもします。長期戦でもあります。食もあったりなかったり、ステージが進むとだんだん食も落ちてくるし筋肉量も少なくなります。

気持ち悪い状態を少しでも和らげて食欲を上げるために吐き気止めはよく使用します。

最近は食欲増進剤ってものもよく併用します。食欲増進剤使う時は食欲ない時ですよね。そこに飲み薬の追加はキツい。そんなことを考慮して耳に塗るクリームタイプもあります。耳の皮膚から吸収されて効果を発揮します。好きでよく使います。食欲増進剤併用した方が腎臓病のコントロールしやすいんじゃないかという報告もあります。筋肉量も落ちないし、カロリーも取れるからエネルギーの元にはなるだろうし、腎臓病食も食べてくれるかもしれないですもんね。

最後のポイントは脱水

血液検査でのBUN、クレアチニンが高い=皮下注射 点滴ではなく。

自力での飲水で不足してしまう場合に皮下注射を検討しましょう。脱水にならない量や投与間隔は個体差、病態にもよるのでかかりつけの先生に相談しましょう。

最後に

ここまで読んでいただいた方々本当にありがとうございます。1人でもいれば嬉しいですw

今回は猫の腎臓病をまとめてみました。

ポンっと使えばオールOKという薬はなく「必要な検査」や「薬」「サプリメント」さまざまでしたね。全部を使えばいいかと言うと、無駄な薬は守りたい腎臓に薬の排出と言う負担をかけてしまうだけかもしれません。

かかりつけの先生と「今のこの子」には何が必要なのかを話し合って決めていきましょう。

腎臓病は長く付き合っていく疾患の可能性が高いです。1週間治療頑張ったら治るって病態ではありません。最初は手厚く治療は必要かもしれませんが安定してきたなら長い目線で治療コストも重要な要素であると私は思います。昔必要だった薬やサプリは現時点の本人にも必要なのか、皮下注射の頻度は?など長期治療でも、人も猫も疲れずに一緒にいれる時間が長くなれば嬉しいですね。

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