様々な治療の場面で輸液が大変有効な治療手段となります。
今回は輸液の目的や方法に簡単に触れてみましょう
大事なのは
なぜ
なにを
どのくらい
どのように
がポイントです。
【なぜ〜輸液の目的〜】
生命維持に必要な「恒常性の維持」のため水分、電解質(ミネラル)、酸塩基平衡(Ph、身体が酸化して錆び付いてるかどうかというイメージ)、栄養 の正常化もしくは予防
つまり、崩れた液体のバランスを元に戻すか、崩れないように予防することですね
体の60%は水分でできているので輸液は治療の有効性に大きく関わります
【なにを〜輸液の種類〜】
生理食塩水や乳酸リンゲルといった一般的な輸液剤や栄養輸液アミノ酸点滴など様々な種類があります。
【どのくらい〜輸液量決定の基準〜】
1日に失われる水分量から投与量を計算します。
1日に失われる水分は主に尿として20-40ml/kg/day、糞便、汗、呼吸で13-20ml/kg/day と言われています
よって1日に失われる量=補うべき量は40-60ml/kg/day
60ml/kg/dayとは5kgの子であれば60ml×体重5kg=300mlを1日でということですね
ここに嘔吐下痢、炎症などがある場合はその脱水の程度をプラスする必要があります。
3%脱水なら90ml/kg/dayなどここら辺は状態や病気によって変わり少し応用が必要なので今回は無視してください。
なので1日に生きてるだけで必要な水分は60ml/kgということです。みんな飲めてますか?
【どのように〜投与経路の選択〜】
投与経路はいわゆる体の中にどうやって水分を入れるかです。方法は主に3つ
①口からのむ
メリットは簡単。いわゆる時間場所に縛られないし、特殊な機械も必要ありません。
デメリットは動物の体や組織の水分摂取能力に依存するため本当に必要な量が体に吸収されたのかが不明
②血管内に投与する
メリットは静脈血管内に水分が入り循環が改善し血液の量が増え、水分が臓器組織に迅速に分布する。
本当に必要な量を必要な時間で投与できる
デメリットは点滴の管を入れるための技術や機械が必要。場所の制限を受けることでしょうか
③組織に投与する
皮下注射、皮下補液が一般的です
メリットは静脈点滴ほど特殊な機械は不要、時間や場所の拘束も限定的、経口摂取で飲みきれないくらいの量や飲むことが難しい状態の子でも投与可能
デメリットはやはり組織に投与するとその組織の水分吸収能力に依存するため全て有効に使われたかは不明
輸液療法の基本を解説しましたが上記のことを基本として治療方法を選択していきます。
以前質問のあった。点滴はなんで静脈に投与するの?動脈じゃダメなの??動脈の方が早く全身に回りそうとの事でしたが
動脈は非常に高い圧力で血液を送り出しているので輸液剤を外から入れるのが非常に難しいんです。
静脈の圧は3-5mmHgであるのに対して動脈は80-100mmHgなのです。イメージは片手で空のペットボトルを潰すか片手でリンゴを砕くかくらいの力の差ですね。(私の勝手なイメージ)そんなん大変だから静脈にしましょう
しかも静脈の方が皮膚の表面にあるので認識しやすいです。