麻酔とその必要性を簡単に説明してみようと思います。
日本初の全身麻酔による手術の成功は江戸時代1804年10月13日 華岡青州が通仙散を用いての乳がんの手術と記載されています。アメリカでの最初の全身麻酔は1842年のエーテル麻酔なので日本は非常に早く全身麻酔というものを実施していたことになります。当時日本は鎖国ですから非常に驚くべき島国ですね。
さて
麻酔状態とは言葉で表すと
『コントロール可能で、可逆的な意識感覚の消失』となります
一つ目のコントロール可能の具体例は
寝ている時も皆さんは意識を消失していますよね。しかし睡眠の深さをコントロールしている人はいないと思います。これが同じ意識消失でも麻酔と睡眠の違いです。
二つ目は可逆的
死んだ時は意識感覚は多分消失していますよね。これは元には戻せないので麻酔ではありませんね。
つまり
麻酔は薬を使った睡眠状態で深さを調節することが可能で元の状態に戻すことができるものと言えますね。
なぜ麻酔をかけないといけないのか?
診療していると高齢なので局所麻酔でできないのか?麻酔せずに根性でできないか?と聞かれることもあります。
対応可能な範囲もあるかもしれませんが基本的に手術は全身麻酔を勧めます。
なぜかというと
ものすごい恐怖や痛みを感じると『ショック状態』に陥るためです。
ショックとは「携帯をなくしてショック」とかのショックではなく
「突然、内部恒常性の維持ができなくなった状態」のことをいいます
通常は身体や細胞は機能できるように、色々な細かい作業を行って生命を保っています。ショックは突然それが機能しなくなるのです。リカバリー機能がうまく作動していない、いわゆる死の一歩手前ですね
もう少し詳しく書くと、体の中ではドミノ倒しのように負の連鎖が起きます↓
痛みや恐怖などのストレスにより交感神経の異常興奮でカテコラミン(アドレナリンみたいな)上昇が起きます。
これにより血管が収縮し末梢組織の循環不全が起きます。循環不全の場所には酸素が行き渡らないので低酸素による障害も続発します。この低酸素が脳や心臓など重要な臓器に進むと多くの臓器が機能不全となる多臓器不全に陥り死亡します。
ですので最初の過度な痛みや恐怖を取り除く、軽減することがドミノを倒さない秘訣なのです。
だから痛みを感じさせない、意識を消失させて恐怖を感じない麻酔が必要ということですね。
麻酔の入門編でした